傘と潜熱【二浪時夏期講習】

何も考えずに書いたこっち ↓http://matryoshkaddicted.hatenablog.com/entry/2019/08/08/000147 の改訂版。どっちが良いだろうか。改訂前の方が良い可能性があるんよな。・ ・「傘と潜熱」(一)2019年の夏 つまり2浪時のこと。僕は1浪時、御茶ノ水にある駿…

傘(四)

講習が終わりいよいよ帰ることとなる。講習最終日。本当に彼と今生の別れになるかもしれない。彼がこの予備校で属しているのは東大の理系を目指すコースだ。志望大学は文理が違うといえど同じだ。共に合格すれば同じキャンパスに通うことになるけれど、受験…

傘(三)

彼のノートを見せて欲しい、という要請は当然ながら快諾した。しかし、写真にでも撮れば……くらいのことしか言えなかった。彼と言葉を交わして関西風のイントネーションを感じた。僕も関西出身であるため親近感がわいた。さらに彼が講習に遅刻した理由は寝坊…

傘(二)

その日は軽く雨が降っていた。予備校に入ろうとした時、綺麗な女性が、上着を頭で抑えて雨を凌ぎながら出てきた。きっとコンビニにでも行くつもりだったのだろう。幸い僕は傘を持っていた。予備校という屋根のある場所に入るわけだから傘はしばらく要らない…

傘(一)

それは2019年7月にあった、ある予備校の夏期講習の四日目のことだった。四日間連続の講座だ。英語の講座だった。そして、その最終日がその日だったというわけだ。両隣の人間は毎日同じだ。 かといって、普通、言葉を交わすことはほとんどない。 予備校の教室…